サーモスタットは、エンジン冷却水の温度をコントロールするための装置で、エンジンが効率よく作動するために重要な役割を担っています。
サーモスタットが故障すると、ヒーターの効きが悪くなったり、オーバーヒートを引き起こす原因になることもあります。
今回の記事では、自動車のサーモスタットの仕組みや寿命の目安、または故障した時の交換費用などを紹介します。
サーモスタットの仕組み
自動車のエンジンは、冷却水(クーラント)をウォーターポンプの力で循環させることで適切な温度に保たれていています。
この冷却水の温度を調節している装置がサーモスタットです。
サーモスタットは、弁の開閉によってラジエータで冷やされた冷却水の流れをコントロールする仕組みになっています。
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そのためサーモスタットが故障すると、温度調節ができずに、エンジン不調を引き起こす原因になります。
温度が上昇すれば、サーモスタットの弁が開き、ラジエータで冷えた冷却水が循環し、正常な温度までエンジンが冷やされます。
エンジンの熱で温まった冷却水は、放熱部であるラジエータを通過することによって冷やされ、再びエンジンへと戻ります。
一方、温度が低い状態の場合は、サーモスタットの弁が閉じたままになり、ラジエータで冷やされた冷却水は循環せずに、エンジンで温まった冷却水だけが循環する仕組みになっています。
サーモスタットの弁が閉まっているため、ラジエータ経由の冷却水は行き場を失い先には進めない状態になります。
高温の冷却水だけが循環する状態になるので、エンジンがすぐに温まる仕組みになっています。
サーモスタットの中央部分にはワックスが入っており、その周囲にバネが巻き付いています。
高温になるとワックスが膨張することで、巻き付いたバネを押し出し、弁を開く仕組みになっています。
サーモスタットの種類は、ワックスの性質を活かした膨張式の他にも、金属の性質を活かした機械式や電気回路を利用した電気式などがあります。
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サーモスタットの開弁温度
サーモスタットの弁が開く温度は、76.5℃~86℃ほどに設定されています。(設定温度は車種によって異なる)
サーモスタットは、設定された開弁温度になったからといって、いきなり全開になるわけではなく、冷却水の温度の上昇に応じて少しずつ弁が開いていき、設定温度からプラス10℃ほどで全開になります。
サーモスタットの弁が開き始める温度が86℃だとすると、全開になる温度は96℃なので、とても高温に設定されています。
高温に設定されているのには理由があって、ヒーターの熱を作っているのは温められた冷却水で、この水温が低いと冷たい風しかでてきません。
冷たい状態では、サーモスタットの弁が閉まったままになり、エンジンで温められた冷却水が循環し、どんどん温められていきます。
冬場の外気温度が低い季節でもヒーターが効果的に使えるように、サーモスタットの開弁温度が高めに設定されているのです。
実は、エンジン出力効率の最も良い水温は約70℃で、70℃を超えるとパワーダウンしていまうと言われています。
冷却水の温度が70℃を超えると、水温の影響を受けてエンジン内の吸気温度が上昇し、空気が膨張すると同一容積での酸素濃度が減るので、燃焼力が低下してエンジンのパワーダウンになるのです。
サーモスタットの故障の症状
サーモスタットの故障で最も多い症状は開閉弁の固着です。
サーモスタットは弁の開閉よって冷却水の温度を調節している装置なので、弁が開いた状態で固着しているか、または弁が閉じた状態で固着しているかによって、エンジンへの影響は異なります。
正常な状態の水温計は、目盛の真ん中か少し低い位置を指しているはずです。
水温計の針が極端に高い位置を指したり、低い位置を指した状態が続く場合は、車に何らかのトラブルが発生している可能性があります。
ただし、水温計に異変が起きたからといって、全てがサーモスタットの故障が原因というわけではありません。
冷却水漏れやウォーターポンプの故障、あるいはラジエータの不具合などが原因で症状があらわれる場合も考えられます。
オーバーヒート
サーモスタットの弁が閉じた状態で固着している場合は、ラジエータで冷やされた冷却水を循環することができないので、エンジンの温度はどんどん上昇し、最終的にはオーバーヒートを引き起こす原因になります。
長年乗った古い車種のサーモスタットは劣化して弁の固着が起こりやすい。
また、サーモスタットの劣化が生じるほど古い車種になると、ウォーターポンプが正常に動いていない可能性もあります。
ウォーターポンプは、冷却水を循環させる動力になっているので、ウォーターポンプが故障していると、冷却水を循環できないためオーバーヒートの原因になります。
赤の水温警告灯が点灯または点滅した場合は、オーバーヒートの恐れがあるので、車を安全な場所に停車して、早急に整備工場やディラーに連絡しましょう。
オーバーヒートとは、エンジンから発生する熱量が、冷却する性能を上回ってしまうことで起こるエンジントラブルのことを言います。
オーバーヒートの原因については様々なことが考えられますが、その主な原因はエンジン冷却システムに異常が発生している場合が多い。
水温警告灯(マーク・ランプ)が赤く表示され、オーバーヒートの症状が悪化した状態まま走行を続けると大変危険です…
オーバークール
オーバークールとは、オーバーヒートとは逆の過冷却状態のことを言います。
サーモスタットの弁が開いた状態で固着すると、ラジエータで冷やされた冷却水が循環し続けるので、オーバークールを引き起こす原因になります。
オーバークールは、オーバーヒートのようにエンジンに致命的な故障を引き起こすものではありませんが、車は水温が低過ぎると出力効率が悪化していくので、じわじわと車の各部分に不具合があらわれるようになります。
また、ヒーターは、冷却水の熱を利用して温かい風を出しているので、寒い季節に暖房が効かなくて辛い思いをすることになります。
十分にエンジンを暖機しても青の水温警告灯が点灯する場合は、早めに整備工場などで点検を行うようにしましょう。
サーモスタットの寿命
基本的には、サーモスタットは定期的に交換する部品ではなく、不具合が出てから交換することが多いので、一概にサーモスタットの寿命を決めることは難しい。
しかし、不具合が起こりやすい時期を考えると、サーモスタットの寿命の目安としては、10年または走行距離10万キロほどだと言えます。
車の使用状況によってもサーモスタットの寿命は左右されます。
普段からエンジンに負担をかけるような走行を続けていると温度が上昇しやいので、サーモスタットの寿命も短くなる傾向があります。
サーモスタットの交換費用
サーモスタットには様々な種類があり、なかにはやや高額のものありますが、サーモスタットの一般的な部品の単価は2,000円前後です。
また、サーモスタットを交換する場合は、冷却水を補充するので、冷却水の単価1,000円ほどが追加されます。
サーモスタットの部品代2,000円と冷却水1,000円に、工賃(技術料)を加えた金額が交換費用になります。
工賃は整備工場によって異なりますが、5,000円~8,000円ほどになるので、サーモスタットの交換費用は10,000円ほどになると考えられます。
サーモスタット
車の修理の値段は、整備工場によって大きく違うことがあります。
いつも利用している整備工場が、実は高い値段で修理していたというケースも少なくありません。
そのため、複数の整備工場を比較検討することをお勧めします。
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